スクリーンタイムと発達スクリーニング検査での子どもの成績の関連
この論文はJAMA(アメリカ医師会雑誌)の小児科分野、JAMA pediatricsに2019年1月にカナダ、カルガリー大学が発表した論文です。
Association Between Screen Time and Children’s Performance on a Developmental Screening Test
テレビ、スマホ動画、ゲームなどスクリーンを見る時間、スクリーンタイムと子どもの発達に関連があるのかを調べた研究になります。
この研究が行われた背景には、欧米の子ども達は4人に1人が就学前に十分な準備ができていないことがあります。その一因としてスクリーンタイムが関係しているのでは、スクリーンタイムによって準備のための活動・経験が奪われているのではないかと考えられているのです。
どのような人が対象なのか
カナダのカルガリーに住む、2441組の母児を対象とし、妊娠初期から継続して経過観察が行われた方が対象となりました。時期は2011年から2016年の間に行われました。
方法
子どもの年齢が2歳、3歳、5歳の時に、1)スクリーンタイム、2)発達に関しての調査票を母親に回答してもらいます。
発達に関しての調査はASQ-3(Ages and Stages Questionnaire 3rd)が使用されました。これはコミュニケーション、粗大運動、微細運動、問題解決、社会性について評価する質問票です。
結果
各年齢でのスクリーンタイムの平均は
- 2歳 17.09時間/週
- 3歳 24.99時間/週
- 5歳 10.85時間/週
アメリカ小児科学会はスクリーンタイムは2~5歳では1日1時間以下になるように推奨しています。このデータからは多くの子どもが長時間スクリーンを見ていることがわかります。
そして発達のスコアは、2歳、3歳の時にスクリーンタイムが多い子どもは、それぞれ3歳、5歳になった時のASQ-3のスコアが低くなりました。
他に要因はないのか?
子どもの発達には多くの要素が関わります。なので「本当にスクリーンタイムだけが悪いのか?」という疑問が出てきます。そのような他に影響を与える因子のことを、交絡因子といいます。
この論文でも交絡因子について考慮し、検討を行っています。以下の内容が検討され、統計学的に評価されましたが、これらの影響を加味しても、上記の結果は変わりませんでした。
- 母の年齢
- 子どもの性別
- 親の収入
- 親の学歴
- 身体活動の度合い
- 母の積極性
- 子どもに読み聞かせをするか
- 母の精神状態(うつ状態)
- 夜間の睡眠時間
- 子どもを保育に預けているか
もう一つの注目点は時代・技術の変化
みなさんも感じているとは思いますが、ここ数年で動画コンテンツの技術は大きく変わりました。ネットで多くの動画が簡単に見えるようになりましたし、通信技術が新しくなることで外出先でも動画を見る機会も増えていることでしょう。
この研究が行われたのは2006年~2011年の数年ですが、この間の技術の変化が、視聴習慣に変化を与えている可能性も考慮する必要があると思います。
内容は関係ないのか?
この研究ではスクリーンタイムの時間のみ評価され、内容に関しては評価されていません。もしかすると学習を促すような動画を見た場合には、逆に発達はよくなるかもしれませんが、そのように証明された報告はありません。(一般的にいわれる”知育アプリ”といわれるものは経験に基づくもので、本当に有効性が証明されたものではありません)
結論
長時間のスクリーンタイムは子どもの発達に悪影響である
この研究から何を考えるか
この内容だけみると「うちの子は知育アプリで頭がよくなった。英語が話せるようになった」などの反対意見をもつ方も多いでしょう。
また、「他に発達に悪影響のものがあったのでは?」との疑いも消えないと思います。
ですから、この論文は「スクリーンタイムが抱えるマイナス点を認識できた」と考えるのが私はいいと思います。少なくともスクリーンタイムが悪いかもしれないという証拠です。
以上をふまえて、子どもとスクリーンタイムをどのようにしていくか考えていくのが、これからの新しい育児になると思います。
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