PEDIATRICS(アメリカ小児科学会雑誌) Volume 142, number 5, Novemberより紹介します
Effectiveness of a Hand Hygiene Program at Child Care Centers:A Cluster Randomized Trial
論文の要旨
呼吸器感染症は保育所での罹患率や過度の抗生剤が処方されることの最も大切な原因です。手指衛生の教育、実践が呼吸器感染と抗生剤処方にどう影響するのかを評価されました。
スペイン、アルメニアの24の保育所、0-3歳の子どもたち911人が8カ月に渡って経過をみられています。
①石鹸と流水群、②手指消毒群(70%のエチルアルコールを含む)、③コントロール群にわけられました。
手指消毒群ではコントロール群より呼吸器感染、抗生剤処方が減少した。石鹸と流水群は手指消毒群より呼吸器感染、抗生剤処方が多かったです。子供たちは呼吸器感染のため5186日欠席しましたが、手指消毒群は他の2群よりもその割合が少なかったです。
手指衛生の教育と手指消毒を行うことで保育所の欠席日数、呼吸器感染、抗生剤処方を減らすことができました。
研究の背景
呼吸器感染症は5歳未満の子どもにおいて、その罹患率と感染に伴って抗生剤が処方されることが問題となっており、さらに保育所はこれらの危険性がより高いです。この研究が行われたスペインはヨーロッパ内で0-2歳に最も抗生剤が使用されている地域です。
手洗いは最も大切で効果的な感染予防です。アルコール消毒剤が呼吸器炎や胃腸炎に対して効果があることは示されていました。しかし、保育所での効果についてはあまり研究されていませんでした。
研究の方法
24の保育所を8施設ずつ、3つの群に分けた。
- 石鹸と流水群(SWG):(介入群)
- 手指消毒群(70%のエチルアルコールを含む)(HSG):(介入群)
- いつもの手洗い(CG):(コントロール群)
0-3歳で、週に最低でも15時間以上保育所にいる子どもが対象
参加した全ての両親と保育所職員に1時間の手指衛生についてのワークショップを行った。また1か月ごとに講習会を3回行った。2週間ごとに手指衛生や感染の伝播についてのお話し、歌、ポスターを教室でみせた。
介入群はそれぞれ液体せっけん、手指消毒剤を与えられ、家でも行った。
研究の結果
最終的に911人の子どもが参加した。5211件の呼吸器感染症が発生した(コントロール群 1907件、石鹸と流水群 1633、手指消毒 1671件)。具体的な診断結果は、28.2%上気道炎、83.2%中耳炎、87.2%咽頭扁桃炎、87.5%下気道感染症、16.6%急性気管支炎、25%細気管支炎であった。39.4%に抗生剤が処方された。
子どもたちは5186日保育所を欠席し、欠席率は手指消毒群で最も低かった。
- コントロール群 1891日 4.2%
- 石鹸と流水群 1627日 3.9%
- 手指消毒群 1668日 3.25%
多変量解析を行った結果も、呼吸器感染症の発生、抗生剤の処方は手指消毒群が特に低かった。
結論
保育所において手指消毒を行い、子ども、親、保育所スタッフに教育を行うことは、欠席日数、呼吸器感染症、抗生剤の処方のいずれも減らす効果があります。おそらく保育所などにアルコール消毒剤は設置されていると思いますので、自宅でも同様に手指消毒を行うことが大切だと思います。今回の研究同様に70%のエタノールが含まれている商品は以下のものが販売されています。肌に問題なく使えるものを是非つかってみてください。
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