【論文】屋外での活動が、子どもを近視から防ぐ



JAMA Pediatricsに2019年5月に”Viewpoint”として掲載された記事です。

Outdoor Activity Protects Against Childhood Myopia-Let the sun Shine In.

子どもで問題になるMyopia(近視)は何が原因なのか?近年の色々な研究から明らかなことがまとめられているので紹介します。

デジタル機器の使用による子どもへの影響が気になる

子どものデジタル機器の使用に伴い、親が気になっているのは学習、社会性、肥満、整形外科的な問題です。この問題に関してアメリカ小児科学会は2016年に報告と推奨(Children and Adolescents and Digital Media)を発表しています。

眼に関して、特に近視に関しては様々な研究が行われており、デジタル機器が原因ではなく、社会活動が屋内にかわっていったことが原因であると示されています。

近視とは?

近視とは眼の屈折異常で、眼鏡やコンタクト、手術により矯正することができます。近視は遠くのもの(光)gが見づらくなります。アメリカでは12歳から54歳の3人に1人が近視で、年々増加傾向にあります。近視の治療にかかっているお金、コストは年間40憶ドルです。

日本では文部科学省学校保健統計調査報告書によると1979年には小学生の2.7%、中学生の13.1%、高校生の26.3%だったのが、2010年には小学生の7.6%、中学生の22.3%、高校生の25.9%と増加しています。高校生では4人に1人が近視です。

近視の原因は遺伝?環境?

若年発症の近視は小学校に発症が多く、10代の中頃にかけて症状が強くなります。原因としていくつかの遺伝子の関連があると報告されています。しかし、近年の近視の増加は遺伝子だけが原因であることの説明にはなりません。紙やテレビのみだった子どもたちの生活が、現在のデジタル機器に代わってきたことが疑われます。

以前より近距離での作業(読書、勉強、テレビの視聴、コンピューター使用)が近視の原因といわれていました。しかし、縦断的研究(ある程度の期間、対象に影響を及ぼしたのかを検討する)ではこれらの作業は近視の重要なリスクではないことが、オーストラリアや台湾、シンガポールからの報告で明らかになりました。

ある研究ではメディアの変化は急速であり、10年前の研究データさえ時代遅れだと主張するものもある。しかし、この記事の著者らが行った4512校の6-13歳を対象とした研究では、読書とコンピューターの使用のオッズ比(簡単にいうと響を及ぼすか比率)は1.00で変わりはなかったと主張している。

つまり、新しい機械が悪いわけではないと考えられる。

屋外での活動が多いと近視が減少する

そこで注目されたのが屋外での活動であり、これがより影響する要因と考えられる。よりたくさん屋外で過ごすと近視になる確率が減ったのです。しかし、すでに起きている近視の進行を抑えるほどのものではありませんでした。Orinda Longitudinal Study of Myopiaという研究では、両親が近視の場合、屋外活動が少ない子どもは眼鏡が必要になる確率は60%にも達した。週に14時間屋外で過ごした子どもは、近視になる確率が20%程度にまで減少した。この傾向は両親が近視でない子どもでも確認された。

なぜ屋外活動は近視を予防するのか?

十分な仕組みはわかっていませんが、主なものとして明るい光が網膜でのドーパミン放出を促すためではないかと考えられています。ドーパミンが、正常な眼球の発育を促し、その結果近視のリスクを軽減するとのことです。

まとめ~必要な屋外活動は?~

まだ近視ではない子ども、特に近視になるの可能性のある子どもはより多くの時間(週14時間)を屋外で過ごすと近視の予防によいとの報告です。

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病院で勤務する小児科専門医 1児(娘)の父です。 娘の誕生を機に、小児科医だからできる育児情報の配信をはじめました。 育児、子どもの病気、最新の論文を紹介していきます。