本当は怖い、子どものいる家庭で加熱式タバコのほうが危険な理由

加熱式タバコ



加熱式タバコは2014年から販売がはじまった、新しいタイプのタバコです。

厚生労働省が行った、2019年の国民健康・栄養調査では、喫煙者のうち26.7%が加熱式タバコをつかっており、その割合はふえています。

とくに多いのは30代でで48.1%です

一方で加熱式タバコを誤飲する子どもの事故報告もふえてきました。

この記事では加熱式タバコの特徴、子どもの事故がおおいわけ、事故事例を解説します。

加熱式タバコの成分

日本小児科学会 Injury Alertに報告がまとめられています

Injury Alert(傷害速報)Follow-up報告 No.7

葉タバコの量

300mg(通常のタバコ 550-700mg)

加熱式タバコでは高密度につめこまれていてサイズが小さいので、量も少ないことがわかります

ヒートスティックを水につけてとけでるニコチン量

4.3-5.4mg(通常のタバコ 9-28mg)

葉たばこの量が少ないので、含まれるニコチン量も少ないということですね。

この量であれば、あとで述べる致死量にはならない可能性が考えられます。

蒸気として吸い込むニコチン量

0.49mg(通常のタバコ 0.8mg)

これはタバコの吸いかたにもよるのですが、今までのタバコよりも少ないといえます。

ニコチン中毒

危険性を考えるためには、ニコチンはどれぐらいで有害なのかをしる必要があります。

急性ニコチン中毒と症状

主にタバコを誤飲、誤食ことによっておきるので、子どもは注意しなければなりません。

症状は、めまい、下痢、腹痛、けいれん、昏睡、縮瞳、錯乱などがあります。

中毒量・致死量

嘔吐がおきるのは2〜5mg

乳幼児の致死量は10〜20mg(ちなみに、成人は4060mg

つまり半分から1本のタバコを子どもが食べると死亡するかもしれないということです。

 

ここまでの情報を考えると、加熱式タバコは1本のニコチンの量がかなり少なく、喫煙者にも、周囲にも安全に思えますね。

しかし、子ども特有の問題点が加熱式タバコにはあります。

子どもの事故が多い理由

2つの問題があります

サイズ

加熱式タバコのヒートスティックは2.5cm程度と、通常のタバコよりもかなり短いのが特徴です。

タバコ一本を全て食べるのはむずかしいが、2.5cmのカートリッジであれば、かんたんに口にいれて飲みこめます。

つかっている年齢層

まだ多くはないですが、少しずつふえている加熱式タバコの使用者。

とくに20−40代に多いので、子育てをしている親が使う可能性は高いといえます。

 

以上のことをふまえて、どのような年齢で起きているかの症例を紹介します。

事例紹介

小児科学会のホームページでは10件の報告があります。

年齢は生後8ヶ月から1歳4ヶ月まで、なんでも口にする年齢です。

大人が寝ている間、ほんの数分目をはなしたすきに事故がおきています。

タバコは居間や机のうえにおいていることがほとんどで、ゴミ箱から吸い殻をみつけたこともありました。

何も症状がなくて経過観察でよかった場合だけでなく、嘔吐をくりかえすので何件かは胃洗浄もおこなわれました。

まとめ

加熱式タバコは、ニコチン量は少ないかもしれませんが、そのサイズから子どもが誤飲するリスクは、従来のタバコよりも高いです。

使うひとがこれからさらに増えるので、子どもを守るために注意する必要があります。

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病院で勤務する小児科専門医 1児(娘)の父です。 娘の誕生を機に、小児科医だからできる育児情報の配信をはじめました。 育児、子どもの病気、最新の論文を紹介していきます。