子どもが新しいタイプの洗濯用洗剤を誤飲!症状、危険性を知っていますか?



CMやお店でもよくみかけるジェルボールタイプの洗剤。子どもが思わず遊んだり、口にしてしまいそうと思った方も多いと思います。「今までの洗剤と同じでしょ?」と考えている人に是非知っていただきたい事故症例を紹介します。

小児科学会 Injury Alert

小児科学会のInjury Alert(傷害速報)には日常生活の中で起きた事故症例の詳細が報告されています。事故を知ることで予防することが可能であるにもかかわらず、同様の報告がくりかえし起きていたり、思いもよらない状況で事故が発生していることもあります。

#050 新しいタイプの洗剤(1回分パックタイプ洗濯用液体洗剤)の誤飲

Injury Alertには事例1から7までの報告があります。これほど類似症例が報告されている事例は、Injury Alertの中でも多い方だと思います。事例1については詳細を、その他はまとめて紹介します。

事例1 発生時の様子

1歳11ヶ月の女児。5歳の兄と一緒に洗面所にいた。もともと兄がCMを見てこの洗剤を気に入り、購入をせがんだため購入したばかりだった。兄が洗剤を収納スペースから取り出して、床にばらまいていたものを児が口にして、かじってしまった。

泣き声に母が気がついて見に行くと、製品の中身が3分の1ほどなくなっていた。直後から児は苦しみ出し、3 回嘔吐した。日本中毒情報センターに電話して相談したところ、医療機関への受診を勧められ、病院受診となった。

治療経過

病院到着時は摂取から2時間以上が経過していた。来院時は寝ており、状態は安定していた。経過観察のみで問題なく、水分摂取もできていたので帰宅となった。

事例2~7

新しいタイプの洗剤の類似例は、年齢が1〜2歳前後。親が目を離している間に子どもが勝手に容器や収納を開けて事故が起きています。今回のジェルボールタイプだけでなく、ラムネ菓子のようなタイプの洗濯用洗剤、トイレ便座内面につけるゼリータイプの洗剤も含まれています。症状は嘔吐が多く、複数回嘔吐することもありましたが、幸いなことにいずれも軽症にすんでいます。入院事例もありましたが、経過観察のみの短期間でした。

メーカーが作成しているケースから子どもが出してしまう場合もあり注意が必要です。類似例の中で、販売元に報告し複数回のやり取りをした経過が書かれていましたが、「現時点では剤型や容器を変えることは考えていない。手の届かないところにあれば事故は事故は考えにくい」とのことでした。自分の身は自分で守るしかないということです。

第3の洗濯用洗剤

2014年4月より日本でも販売され、その便利さから人気になっています。新しい商品が発売されると、必ず新しい事故が起きるものです。アメリカでは2013年の1年間に同様の事例が5歳以下で約1万件報告されており、増加傾向にあります。

口に入れて噛んだり、握りつぶしたりするのはもちろん、濡れた手で触れるだけでフィルムが破れることもあります。このタイプの洗剤は洗剤が濃縮されているため、従来の洗剤の誤飲でみられる症状と比較して、複数回の嘔吐、呼吸障害、意識レベル低下、角膜損傷などが世界では報告されています。

専用の容器にいれていても、子どもが開けることはありますし、偶然容器が棚から落ちることで子どもが手にする場合もあります。念には念を入れて、管理を行うことが大切です。

日本中毒情報センターからの注意喚起

日本中毒情報センターからも2015年に注意喚起されています。

パック型洗剤による事故に注意しましょう!(PDF)

中毒情報センターへ問い合わせたい場合は以下の電話へ。

■大阪中毒110番(365日 24時間対応)
072-727-2499 (情報提供料:無料)

■つくば中毒110番(365日 9時~21時対応)
029-852-9999 (情報提供料:無料)

もし、誤飲してしまったら

自己判断は危険な場合もあるので、医療機関を受診することをおすすめします。その際、誤飲の可能性がある商品の情報(商品名、成分表)がわかると対応しやすいです。しかし、このような事故は起こさないのが一番なので、気になる方は自宅の洗剤保管の状況を見直してみてください。

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病院で勤務する小児科専門医 1児(娘)の父です。 娘の誕生を機に、小児科医だからできる育児情報の配信をはじめました。 育児、子どもの病気、最新の論文を紹介していきます。